木々と共にくらす家

札幌郊外住宅地に建つ小住宅である。ご新居のテーマを「木」として、スローライフに暮らす「ほっこりする家」を望まれた建築主が巡り会った敷地は、小川の流れる緑豊かな自然公園に隣接する南斜面の土地だった。敷地形状は南北に細長く、東西には隣家があり、南東には公園越しにマンションがある。北側接道で、南斜面の林を下ると小川が流れ、自然公園が広がり、その先に山々が望める。
敷地の南側にある東西に延びる林を広く望むことができ、隣家やマンションが気にならず、小川から迫り上がる斜面の林を満喫できるよう、リビングをオーバーハングさせ、隣家の床レベルと異なる高さで傾斜地の林の中に浮かべた。この南面したリビングとこれに繋がるダイニングは、夏には葉が生い茂り冬には落葉する木々の季節によって異なる木陰を利用し、室内温熱環境に有効な日射の制御がなされている。
接道レベルに玄関を配し、この床レベルを2階にすると、リビングの床レベルは中2階となる。水廻りとダイニングを2階に配して排水を容易にし、寝室群を1階に配する断面構成とした。平面的に少し角度の振られた中2階のリビングとダイニングの立体的なズレが室内に多様な方向性を創り出しつつ、これを覆う1枚の片流れ屋根が一体の空間にまとめあげている。ダイニングとリビングの段差はひな壇のような幅の広い階段で繋げられ、ダイニングとリビングの両方から行き来が出来るよう設けられた屋外のデッキは、屋内と屋外を交錯した回遊動線をつくり、屋内に屋外の広がりを創出している。
玄関のドアを開けると、視線はトンネルのような空間の向こうに見える緑に誘導され、トンネルを通り抜けると上下左右に緑の空間が広がる。リビングから洞穴にもぐるように階段を下りると、自然の驚異から守られ温熱環境も安定した洞窟のような落ち着きのある、鉄筋コンクリート外断熱でつくられた1階の空間に行き着く。
ここで営まれる木々を間近にした日常の暮らしが、自然の営みと共にある暮らし方の手掛りを示唆してくれるかもしれない。

DATA

  • 所在地: 札幌市南区
  • 構造設計: (株)福本構造設計
  • 設備設計: (株)照井康穂建築設計事務所
  • 施工: (株)藤井工務店
  • 主要用途: 専用住宅
  • 敷地面積: 371.90㎡
  • 建築面積: 55.57㎡
  • 延床面積: 95.48㎡
  • 構造: 鉄筋コンクリート造+木造
  • 規模: 地上2階
  • 空調: 低温温水式躯体放射暖房
    (熱源:ハイブリッド
    (ガスボイラー+空気熱源HP))、
    蓄冷式放射涼房
  • 竣工: 2014年2月
  • 撮影者: 古瀬桂

> 一覧へ戻る