森を楽しむ家

森と星が好きな建築主がみつけた敷地は、札幌郊外藻岩山の中腹、南斜面の自然林が住宅街にせまった森の中でした。森の中ですから、悪天候の日、厳しい冬には自然の脅威をより身近に感じたりもします。そこで、家にいれば外界から守ってくれている安心感をもてるようにしつつ、この環境を活かし、北海道のすばらしい四季を満喫できるよう、とりわけ、短いけれど快適な夏も楽しめる家をめざしました。
建物は、敷地の傾斜を利用し、南側を2階建て、北側を中2階平屋のスキップフロア*とし、全体を片流れの大屋根で覆う形態です。
眺望の開ける南側には深い庇をもつテラスをもうけ、大きな折れ窓を開放するとこれにつながる居間と一体となります。山を背負ったような北側にはダイニングとつながるウッドデッキ。これらは屋内外のグラデーションをつくり、内外をなじみよくスムーズに連続させています。さらに、どの窓からも木々が顔を出し、森の中にいる感じを一層高めています。中2階と2階は屋内外を通りながら、ぐるりとまわることができ、建物内に自然な動きをつくり出しています。お子さんたちは、この回り道がお気に入りの様子。
このような空間構成は1階をRC*外断熱*、2階を木造外張断熱*とし、熱を蓄えるコンクリートのおかげで、寒い冬も快適な室内環境を保てることにより成り立っています。また、ここでも暖房の熱源として太陽熱を一杯に蓄えた地中熱*を利用しています。自然エネルギー*を利用することで、CO2の削減に寄与するとともに、奥様の談によれば、光熱費は以前の半分で済んでいるとのことです。
生活のなかで、日々自然の変化を感じられることは、環境と共生していく生活スタイルのきっかけの一つとなるのではないでしょうか。

DATA

  • 所在地: 札幌市南区
  • 構造設計: (有)七田建築構造デザイン
  • 設備設計: 照井康穂建築設計事務所
  • 施工: 三上建設(株)
  • 主要用途: 専用住宅
  • 敷地面積: 642.42㎡
  • 建築面積: 83.43㎡
  • 延床面積: 110.90㎡
  • 構造: 鉄筋コンクリート造+木造
  • 規模: 地上2階
  • 空調: 低温温水式躯体放射暖房
    (熱源:地中熱HP))
    蓄冷式放射涼房
  • 竣工: 2013年2月
  • 撮影者: 酒井広司、川本聖哉

*スキップフロア:階段を介して半階ずつ床の高さがずれていく建物の立体構成をいいます。インテリアの空間が広がって、上下の階に連続感や立体的な流動感を感じさせる効果があります。

*RC:鉄筋コンクリートの略語です。

*外断熱:主にコンクリート構造など熱容量(熱を蓄えられる量)の大きい建物の外壁や屋根を包むように断熱材で覆い、蓄えられた熱(または冷熱)を室内環境に有効利用する方法です。躯体(建物の骨組み)が外気の寒暖から守られ建物の長寿命化を助けるのと同時に、大きな熱容量によって建物の温度変動が小さくなり、室内が快適な環境に保たれます。

*外張断熱:木造の外断熱のことです。外断熱と同様の効果がありますが、一般に木造はRC造に比べ建物の熱容量が小さいため、このような言い方をします。弊所では床の下地をコンクリートにすること等の工夫をして、木造でも建物の熱容量を大きくし、快適な室内環境をつくり出しています。

*地中熱:地球上の全ての陸地に存在し、主に太陽エネルギーを起源とする、おおよそ地下200mより浅い地盤の温度が数十℃以下の低温熱エネルギーのことを言います。 地表から10m〜200mの地中温度は年間を通じておおよそその土地の平均気温よりも1〜2℃高い温度に保たれています。このエネルギーをヒートポンプという機械で汲み上げ、冬は暖房に、夏は冷房に、また給湯や融雪にも利用することができます。

*自然エネルギー:再生可能エネルギーと同義。自然界に存在し繰り返されるエネルギーに由来し、かつ自然界の営みによってこれを利用すると同等以上の速度で再生されるエネルギー源のことです。

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