人を想う建築concept

建築に向き合うとき、いつも思うことがあります。
人々はそこで何を感じ、
どう活動し、どんな夢を描くのか。
住宅であれ、学校や商業施設であれ、それは同じです。

建築の存在意義は建物の造形のみで語られるのでなく、
そこに用意された空間、あるいは環境が
使う人にどう作用するかが重要です。

住まいのデザインや動線計画は
そのために思考されるのであり、大型施設もしかり。
集う人々の関係性や心の動きまでも想像し、
宝物を探りあてるような気持ちで
設計にあたっています。

そして、忘れてはならないのが自然とのつながり。

自然界の摂理を応用した建築環境の創造により、
身も心も満たされ、日々の営みを謳歌していけること。
笑顔のときも、そうでないときも、
ありのままを受けとめる寛容な建築こそ、
私たちが希求するものなのです。

人も環境も、よりよい方へ
エクセルギーという視点exergy

少し寒いけど。少し暑いけど。地球のためにも、家計のためにも、省エネでがまんするのはあたりまえ…。ほんとうに、そうでしょうか。
体感温度は室温と周壁(床・壁・天井などの表面)温度を足して二で割ったものといわれます。そして、人がもっとも心地よく感じる体感温度はおよそ二十二度で、室温約十八度・周壁温度約二十五度のときだといわれます。ん?室温が低すぎるのではと、思われるかもしれません。実のところ、寒い・暑いは、室温よりも周壁から伝わる放射熱によるところが大きいのです。
適切な周壁温度を維持するためには、しっかり断熱された建物を放射熱で涼暖房しつつ、自然の力を借りることも大切です。

たとえば、窓の外の落葉樹は季節ごとに日射をコントロールし、放射熱環境を整えてくれます。夏は涼やかな木陰をつくり、冬は暖かな陽ざしを室内へ。つまり省エネへの近道は、冷暖房の設定を厳しくすることではなく、自然のメカニズムを利用し最適な温熱環境をつくることだといえるでしょう。
近年、自然科学をバックボーンとする環境共生型の技術開発が進むにつれ、「エクセルギー」が重要なキーワードとなっています。エクセルギーとは、エネルギーの資源性を定量的に表すもので、エネルギーや物質の拡散を引き起こす能力をいいます。
壁に熱が伝わるのも、樹木による日射の制御もエネルギーが拡散して起こるもので、絶えずエクセルギーが働いています。エクセルギーは具体的に数値化でき、それを読み解くことで有益な環境デザインにつなげることも可能となります。自然界のポテンシャルをどう生かすか。そこに光を与えるのが、エクセルギーの概念です。

人体のエクセルギー消費と室内空気温・周壁平均温度の関係。最小のエクセルギー消費は2.5w/㎡で、室内空気温18度、周壁平均気温25度の付近が快適

出典:Masanori Shukuya, Exergy(Springer,2013),p.73,79

環境空間の入れ子構造。エクセルギー・エントロピーの一連の流れを示す

出典:Masanori Shukuya, Bio-Climatology for Built Environment(CRC Press,2019),p.6

環境を育むということenvironment

帰る場所がある。
そう思うだけで、人はどんなに勇気づけられるでしょう。
ふるさとは遠い田舎だけをさすのではなく、
自分が守られ、ありのままを受け入れられていると、
素直に感じることのできる地域社会そのもの。
たとえ、そこが都会のまんなかであったとしても、
コミュニティの在り方ひとつで、心の拠りどころとなりえます。
人が人らしく生きるための環境を育むということ。
建築にできることは、まだまだたくさんあります。

そこに暮らす人々が気軽に顔を合わせ、言葉を交わすことのできる地域社会は、住人同士の帰属意識を深め自然なコミュニケーションを形成する。たとえば、コモンスペースが計画的に配置された街並みや、他者を呼び込むガーデンスペースのある住宅地では、子どもも大人も積極的におもてへ出て近隣とつながり、地域に根ざした暮らしを享受できる。その逆はどうか。この絵からは、建築を含む環境と人間の関わりを読み取ることができる。

出典:kunnnallispaino, Viihtyisä ympäristö Ympäristökasvatuksen virikekirja(suomen arkkitehtiliton(SAFA) julkaisuja Press),p.67

代表取締役 / 一級建築士 照井 康穂 Yasuo Terui

  • 1967大阪府生まれ
  • 1992北海道大学工学部建築学科 卒業
  • 1992(株)竹中工務店東京本店 入社
  • 1996(株)アーブ建築研究所 入社
  • 2007照井康穂建築設計事務所 設立
  • 2013(株)照井康穂建築設計事務所として改組
  • 2015〜北海道科学大学 非常勤講師
受賞歴
2017年日本建築家協会 優秀建築選2017 入選
2016年日本建築学会作品選集2016 入選
2014年日本建築家協会 環境建築賞
2009年日本建築学会作品選集2009 入選
2008年北海道建築士事務所協会 きらりと光る北の建築賞
2008年日本建築家協会北海道支部住宅部会 新人賞
2006年日本建築家協会優秀建築選2006 入選
所属団体
NPO 歴史的地域資産研究機構 理事
(公社)日本建築家協会 北海道支部 副支部長(登録建築家)
(一社)日本建築学会 北方系住宅専門委員
(一社)北海道建築士会
著書
共著 「現代板金建築」2017年2月/鹿島出版
共著「みんなで30年後を考えよう
北海道の生活と住まい」2014年12月/中西出版
共著「建築家の清廉 上遠野徹と北のモダニズム」
2010年7月/建築ジャーナル

会社概要company

  • (株) 照井康穂建築設計事務所
    YASUO TERUI Architects Inc.
  • 一級建築士事務所 北海道知事登録(石)第6084号
  • 〒005-0832 北海道札幌市南区北ノ沢3丁目12-34
  • TEL:011-211-4005
  • FAX:011-211-4006
  • 東京サテライトオフィス

業務内容

弊所では、住宅の新築・リフォーム・リノベーションの設計・監理やインテリア(家具・設備)のデザインはもちろん、大型建築物の設計・監理まで幅広く承っております。
さらに、施設計画やコスト・スケジュールマネジメントなど、培ってきたノウハウをベースに、プロジェクトに関わるさまざまなマネジメントサービスを提供いたします。

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