人も環境も、よりよい方へ
エクセルギーという視点exergy
少し寒いけど。少し暑いけど。地球のためにも、家計のためにも、省エネでがまんするのはあたりまえ…。ほんとうに、そうでしょうか。
体感温度は室温と周壁(床・壁・天井などの表面)温度を足して二で割ったものといわれます。そして、人がもっとも心地よく感じる体感温度はおよそ二十二度で、室温約十八度・周壁温度約二十五度のときだといわれます。ん?室温が低すぎるのではと、思われるかもしれません。実のところ、寒い・暑いは、室温よりも周壁から伝わる放射熱によるところが大きいのです。
適切な周壁温度を維持するためには、しっかり断熱された建物を放射熱で涼暖房しつつ、自然の力を借りることも大切です。
たとえば、窓の外の落葉樹は季節ごとに日射をコントロールし、放射熱環境を整えてくれます。夏は涼やかな木陰をつくり、冬は暖かな陽ざしを室内へ。つまり省エネへの近道は、冷暖房の設定を厳しくすることではなく、自然のメカニズムを利用し最適な温熱環境をつくることだといえるでしょう。
近年、自然科学をバックボーンとする環境共生型の技術開発が進むにつれ、「エクセルギー」が重要なキーワードとなっています。エクセルギーとは、エネルギーの資源性を定量的に表すもので、エネルギーや物質の拡散を引き起こす能力をいいます。
壁に熱が伝わるのも、樹木による日射の制御もエネルギーが拡散して起こるもので、絶えずエクセルギーが働いています。エクセルギーは具体的に数値化でき、それを読み解くことで有益な環境デザインにつなげることも可能となります。自然界のポテンシャルをどう生かすか。そこに光を与えるのが、エクセルギーの概念です。